小説の書き綴り

短編小説、雑学、ニュース記事などを雑記に書き綴ります。

ナズナの約束

 

 

夏の終わりの町、ふたりは偶然に出会った。

彼は優雅な風に吹かれるナズナの花を見つめていた。

彼女は、その花に強く惹かれるものを感じて、彼に近づいた。

 

ナズナの花、綺麗ですね。」

 

彼女の声に気づいて、彼は驚いたように振り向いた。

その瞬間、彼女は彼の瞳に吸い込まれるような感覚に襲われた。

彼もまた、彼女の美しさに心を奪われていた。

 

「ああ、そうだね。この花は特別なんだ。」

 

ふたりは花畑の中で、互いのことを語り合った。

彼は陶芸家で、彼女は画家だった。

ふたりは瞬く間に心を通わせ、次第に惹かれ合っていく。

 

ある日、彼は彼女に小さな陶器のナズナの花をプレゼントした。

彼女は嬉しそうにそれを受け取り、彼の手を握った。

 

「ありがとう。これは私の宝物になるわ。」

 

それからふたりは毎日のように会うようになった。

彼女は彼の陶芸を手伝い、彼は彼女の絵を見守っていた。

ナズナの花は、ふたりの愛のシンボルとなっていた。

 

しかし、幸せな日々は突然終わりを告げた。

彼女の画家としての評価が高まり、遠い街で個展を開くことになったのだ。

 

「行かなくてはならないの。でも、戻ってくるわ。あなたのもとへ。」

 

彼女は泣きながら告げた。彼は無言で彼女の手を握り、勇気づけようとした。

別れの時、彼は彼女にナズナの花を渡した。

 

「これを持っていって。ふたりの愛を忘れないでね。」

 

彼女は涙を流しながら花を受け取った。そして、彼女は遠い街へと旅立った。

 

月日は流れ、彼女の個展は大成功を収めた。

彼女は画家としての名声を確立し、多くの人々から賞賛された。

しかし、彼女の心はどこか寂しげだった。

 

遠い街での個展も終わりを迎え、彼女は故郷へと戻ることになった。

心躍らせながら列車を降りると、駅の前で彼が待っていた。

彼女は駆け寄り、彼を強く抱きしめた。

 

「帰ってきたわ。もう離れない。」

 

彼もまた、彼女を抱きしめ、涙を流した。

 

「待ってたよ。ずっと。」

 

再会を喜ぶふたりは、再び日々を共に過ごし始めた。

彼女は故郷で画家としての仕事を続け、彼は陶芸家として成長していた。

それぞれの道で成功を収めながら、ふたりは愛を育んでいった。

 

ふたりの愛の証として、ナズナの花はいつまでも彼らを見守り続けるだろう。