日本の経済成長と分配の好循環を目指す岸田文雄首相の就任を受けて、私たちは今一度、日本の生産性の問題に目を向ける必要があります。特にホワイトカラーの労働生産性が低いことが問題として浮上してきます。
日本の労働生産性の現状
日本生産性本部によると、日本の労働生産性は2019年度、主要7カ国(G7)で最低でした。日本の労働生産性は47.9ドルで、アメリカの77ドルの約6割にとどまっています。これは、ホワイトカラー、つまりオフィスワーカーの生産性が低いためだと考えられます。
ホワイトカラーの無意味な労働
銀行勤務の経験がある私の体験からも、オフィスワーカーの生産性の低さは明らかです。たとえば、役員向けの書類作成や営業活動での無駄な電話、見込み客の訪問回数の増加などが挙げられます。これらは労働生産性を上げるどころか、逆に下げている要因となっています。
生産性の向上と賃金の関係
興味深いのは、生産性が上がっても労働者の賃金が上がっていないという点です。これは、生産性の向上が一部の経営トップや株主に利益をもたらす一方で、労働者には十分に還元されていないことを示しています。著者のデヴィット・グレーバーも「ブルシット・ジョブ」(クソどうでもいい仕事)という概念を提唱し、生産性上昇の利益が無意味な労働に投入されていると指摘しています。
ブルシット・ジョブの例
グレーバーはブルシット・ジョブを以下の5つに分類しています:
- 誰かを偉そうに見せるための取り巻き(受付係、ドアマンなど)
- 雇用主のために他人を脅迫したり欺いたりする脅し屋(ロビイスト、顧問弁護士など)
- 誰かの欠陥を取り繕う尻ぬぐい(バグだらけのコードを修復するプログラマーなど)
- 誰も真剣に読まないドキュメントを延々と作る書類穴埋め人(パワーポイントを量産するコンサルタントなど)
- 人に仕事を割り振るだけのタスクマスター(中間管理職など)
日本の労働環境の改革が必要
コロナ禍を契機にリモートワークが進み、中間管理職の役割も見直されつつあります。これにより、生産性の向上が期待されますが、根本的な問題として、無意味な労働(ブルシット・ジョブ)を排除する仕組みが必要です。
結論
岸田首相が掲げる「成長と分配の好循環」を実現するためには、生産性の向上とともに労働者への公正な分配が求められます。そのためには、日本の官僚組織や企業からブルシット・ジョブを排除し、生産性を向上させる取り組みが不可欠です。私たち一人ひとりが無駄な労働に気づき、それを改善する意識を持つことが重要です。