放課後の教室に差し込む夕日が、机の影を長く伸ばしていた。
誰もいなくなった教室の静寂のなか、菜月はそっとスカートの裾をつまみながら、一歩、前に出た。
「……あのさ、ちょっとだけ、聞いてほしいことがあって……」
言葉と一緒に、頬に熱がじわっと広がる。
視線を上げるのが恥ずかしくて、彼女は手元に目を落としながら、それでも意を決したように言葉を続けた。
「今日じゃなきゃ、きっと言えないと思って……」
まっすぐな瞳が、ようやく彼に向けられた瞬間。
それは、何気ない放課後が、特別な一日に変わる合図だった。
