小説の書き綴り

短編小説、雑学、ニュース記事などを雑記に書き綴ります。

永遠の月

 

淡い月光が優雅に海を照らし、細かな波立ちが砂浜を擽る。
海岸に寄せられたシャボン玉のような泡が、静かに砕け、微かな音を立てる。
メリンダとリチャードは、この無言のメロディに耳を傾け、ふたりでひとつの影となり、月に願いを込めていた。

「月光の約束、リチャード。」メリンダがぽつりと呟くと、彼は彼女の手を握りながら静かに頷いた。

彼らの恋は、言葉にはならないほど深く、また弱くもあった。
リチャードはある秘密を抱え、メリンダは彼の中のその闇を知らずに、ただ彼に愛を捧げていた。

彼らが月光の約束を交わしたのは、運命的な瞬間のように感じられた。
月が浮かぶこの夜、リチャードは結婚を申し込んだのだった。

「メリンダ、君と一緒にいたい、永遠に。」
彼の瞳は深刻でありながらも、彼女への愛に満ち溢れていた。

メリンダは感極まり、リチャードの胸に顔を埋めた。
「永遠に、あなたと。」
彼女の声は微かで、でも確かなものだった。

しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。
リチャードの体に隠れていた病が進行し、彼は彼女に対して言葉を失ってしまった。
彼の中にはメリンダへの愛と、彼女を悲しませないための強い意志が渦巻いていた。

ある夜、リチャードは彼女の眠る顔を見ながら、静かに耳打ちした。

「僕は君との約束を守りたかった。でも、僕の体がそれを許さない。ごめんね、メリンダ。」

彼は病院のベッドで静かに眠りについた。メリンダは彼の手を握りながら、涙を流し続けた。

その夜、彼女は月に語りかけた。
「私たちの愛は、あなたが見守っていたよね。これからも、どうか彼を見守って…」

メリンダは毎晩、彼らが約束を交わしたあの場所を訪れ、リチャードを想い続けた。
そして彼女は信じていた。彼らの愛が月光の中で永遠に生き続けることを。

「永遠の月よ、彼を守って…」

月はただ静かに輝き、ふたりの愛を永遠に抱きしめていた。