今週のお題「こぼしたもの」
真紀はいつものカフェで、一人で読書を楽しんでいた。
窓際の席は彼女のお気に入りで、外の景色と読書に没頭する時間が彼女の小さな幸せだった。
その日も、新しい本を開いて一息ついたところで、隣のテーブルに若い男性が座った。
彼の名前は大樹。
真紀はその名前をまだ知らなかった。
一瞬のうちに、真紀の手からコーヒーカップが滑り落ち、彼の方向へと液体が流れ出した。
その一瞬、時間が止まったように感じられた。
真紀の心臓は急激に鳴り、彼女の視界はコーヒーの液体に完全にフォーカスされていた。
大樹は驚きの表情を浮かべていたが、すぐに彼女の方へ手を伸ばして「大丈夫ですか?」と声をかけてきた。
「すみません、本当に申し訳ないです」と、真紀は顔を真っ赤にして謝った。
大樹は微笑みながら「大丈夫、ただのコーヒーですから」と言って、自分のハンカチでこぼれた液体を拭き取った。
その後、二人はお互いの趣味や興味について話し合い、意気投合。予期しない出会いが、真紀の日常を彩るものとなった。
時間が止まったと感じる瞬間は、人生において特別な瞬間。
真紀と大樹は、その特別な瞬間を共有し、新しい章を始めることとなった。