いつものように教室の窓際の席で、雨粒が窓ガラスに打ち付ける音を聞いていたソウタ。 今日もまた、彼の心は別の世界をめぐっていた。 その世界では、彼は美しく気高い姫と恋に落ちていた。 この平行世界の住人として、そんな夢見心地の恋愛物語を日々想像することが彼の唯一の楽しみだった。
突然、クラスメイトのミナミが彼の前に現れた。 彼女はいつも笑顔で皆を和ませる女の子だったが、今日はどこか憂いを帯びていた。
「ソウタ、どうしたの?また、別の世界にいるの?」
彼ははっとして、ミナミを見つめた。
「うん、そうだよ。だって、現実の僕には恋愛なんて到底無理だし…」
ミナミは彼の言葉に寂しそうな笑顔を浮かべた。
「ねえ、その世界に連れてってよ。私もちょっとだけ、違う自分になりたいんだ」
ソウタの目に映る彼女の表情は、どこか懐かしいような気がした。 そして、二人は手を繋いで、平行世界へと飛び込んだ。
そこは、美しい自然に囲まれた王国だった。 ミナミは姫に変身し、ソウタは彼女を守る勇敢な騎士になった。 恋に焦がれる二人は、運命の出会いから遠い世界を巡る冒険を繰り広げた。
ある日、二人は神秘的な湖畔で出会った。 水面に映る二人の姿は、運命に導かれたかのように重なっていた。 ミナミはソウタの胸に顔を埋め、涙を流した。
「この世界での私たちの恋は、どんなに切なくても、現実に戻れば何も残らないの?」
ソウタは彼女の悲しみを受け止め、優しく答えた。
「違うよ。 この世界で感じた愛は、僕たちが現実に戻っても消えることはない。 だって、僕たちの心の中に刻まれるから。」
ミナミは目を潤ませながら、微笑んだ。
「ありがとう、ソウタ。そう願いたいわ。 この世界での絆が、現実でも繋がっていたらいいのにね。」
湖畔で過ごす時間は、まるで時が止まったかのように感じられた。 二人はずっと抱きしめ合って、互いの温もりを感じることに夢中だった。
やがて、現実に戻る時が来た。 薄れゆく平行世界から、ミナミは泣きながらソウタに言った。
「また、会いたい。 現実でも、このまま一緒にいたい。」
ソウタは彼女の手を強く握り、涙を流した。
「僕もだよ。現実の僕たちも、ここで感じた愛を大切にする。 だから、また会おうね。」
二人は現実に戻り、教室の窓際の席で目を覚ました。 ミナミはソウタに優しく微笑んだ。
「ありがとう、ソウタ。あの世界で感じた愛は、きっと忘れないわ。」
ソウタも笑顔で答えた。
「僕もだよ。 そして、現実でも、君と一緒にいたい。」
ミナミは涙を拭き、ソウタと手を繋いだ。
「約束ね。 どんな世界でも、私たちの愛は永遠に続く。」
これは、彼一人で紡がれた平行世界の夢だったのだった。
ソウタとミナミは現実世界で付き合っていた。
ソウタの中二病的な茶番に付き合っていたミナミは、面白可笑しく教室の窓際で笑っていたのだった。