初夏の選挙運動は都市の空気を熱くした。
大学の学生会長選挙を前に、志候者たちの緊張感が一層高まっていた。
一方で、彼らの中には、選挙よりも別の熱を胸に秘めている者もいた。
彼の名は直人。
直人の胸中には、一人の女性、陽子への未練が燃えていた。
陽子は選挙の対立候補であり、普段は明るい笑顔を見せているが、直人だけが知っている彼女の一面があった。
それは、ひとり暗い角でチョコレートをつまみながら、少し寂しそうに見える彼女だった。
直人は、そんな陽子への思いをチョコレートに込めることを思いついた。
選挙活動の合間を縫って作った手作りのチョコレート。
それは彼の純粋な思いの現れだった。
選挙の日、直人は自分の立候補演説の場で、陽子への愛を告白し、チョコレートを手渡した。
驚く人々、ざわめく声、そして陽子の驚きと恥じらう顔。
その中で直人の選挙の結果はどうであれ、彼の心の中では彼の恋が勝利を収めた。
選挙結果は二人にとって重要ではなかった。
陽子が微笑み、直人の手作りのチョコレートを口にした瞬間、彼らの間に新たな恋が芽生えた。
恋と選挙とチョコレートが絡み合った瞬間、それは新たな物語の始まりだった。
