小説の書き綴り

短編小説、雑学、ニュース記事などを雑記に書き綴ります。

夢幻の如く

 

 

もしもこれが夢ならば、どれほどよかったことだろう。そんな思いを抱きつつ、陽一は目を覚ました。
寝汗でべたつくシャツを脱ぎながら、彼は夜空を見上げた。
星はまばらに光り、都会の灯りにかき消されていた。

昨夜、彼は懐かしい人物との再会を夢見た。
それは幼馴染のエリカ、彼の初恋の相手で、今はもうこの世にいない人だ。
「夢ならばどれほどよかったでしょうね」と彼女は夢の中で微笑んでいた。

学生時代を一緒に過ごし、互いの夢を語り合った日々。
エリカは画家になることを夢見ていたが、ある事故で突然その夢は断たれた。
陽一はその事実を受け入れられず、時が経つほどに彼女の夢を自分の中で生き続けさせた。

彼は起き上がり、小さなアトリエへと向かう。
そこにはエリカが最後に描いたという未完成のキャンバスがあった。
陽一はその前に立ち、彼女が残した色彩の中に溶け込む想いを馳せる。

朝日が窓から差し込み、キャンバスは柔らかな光を浴びていた。
彼は筆を取り、エリカの夢を自分なりに完成させようとした。
「これが最後の一筆になる。君の夢を、僕の手で。」

筆がキャンバスを滑るたび、陽一はエリカとの思い出が蘇るのを感じた。
彼女の笑顔、彼女の声、そして彼女の夢。
すべてが彼の中で生きており、彼はそれを絵にしたかった。

完成した絵を見つめながら、彼はつぶやいた。
「夢ならばどれほどよかっただろう。でもこれが現実だ。君の夢はここにある。」
陽一はエリカが見たかったであろう美しい景色を描いた。

その日、彼は絵を展示会に出品した。
訪れた人々は一様にその絵に感動し、そしてその背後にある物語に涙した。
エリカの夢は多くの人々の心に届けられ、彼女は再び世界に色を与えた。

展示会の後、陽一は一人、静かにキャンバスを片付けた。
そして、彼は確信した。エリカの夢は決して終わっていないと。
それは彼の中で、そして彼を通じて、永遠に生き続けるのだと。