小説の書き綴り

短編小説、雑学、ニュース記事などを雑記に書き綴ります。

もみじの紅葉と秘密の時間

 

 

秋深いある日の午後、ソウタは公園のベンチに座り、目の前に広がるもみじの紅葉を眺めていた。
彼の心は、赤や黄色に色づいた葉の美しさに癒されながらも、どこか寂しげだった。
「もみじの紅葉って、別れの色のようにも見えるな」と、彼はぼんやりと思う。

そんな彼の隣に、静かにアカリが座った。
アカリはソウタの大学の同級生で、彼とは長い付き合いだった。
「綺麗ね、紅葉。でも、ちょっと寂しい気もする」と彼女は言った。

二人はかつて恋人だったが、互いの夢を追うために別れを選んだ。
それから数年が経ち、偶然の再会は彼らの心に複雑な感情を呼び起こした。
「アカリ、お前の夢は叶ったのか?」ソウタが尋ねる。

アカリは少し微笑んで、「うん、でも、何かが足りない気がして」と答えた。
彼女は成功したキャリアウーマンになったが、心のどこかに満たされない空虚さを感じていた。
「ソウタは? 君の夢は?」アカリが尋ね返す。

ソウタは遠くを見つめながら、「夢は叶ったけど、心に穴が空いたような気がする」と答えた。
彼もまた、アカリを離れてから、何か大切なものを失ったように感じていた。

二人はしばらく黙って、紅葉を眺め続けた。
もみじの葉が風に揺れるたび、彼らの心も揺れ動いた。
「ねえ、ソウタ。もしもやり直せるなら…」アカリが言葉を切る。

ソウタはアカリの手を握り、彼女の目を見つめた。
「アカリ、もう一度、一緒に歩いてみないか?」
アカリの目には涙が浮かんでいたが、彼女は優しく頷いた。

もみじの紅葉の下で、二人は新たな約束を交わした。
彼らの心には、秋の終わりを告げるもみじの葉のように、新しい始まりの希望が生まれていた。
「紅葉のように色づいた思い出を、これからは一緒に作ろう。」