深夜の古い家屋、そこにはかつての住人である少女の幽霊、ユキが佇んでいた。
彼女は長い間、この家で何かを待ち続けていた。
外界とは隔絶された時間の中で、ユキは静かに日々を過ごしていた。
ある夜、家に一人の若者、トモが越してきた。
彼は古い家を改装しようと考えていたが、ユキの存在に気づくと、恐れることなく彼女に近づいた。
「君は何を待っているの?」トモが優しく尋ねる。
ユキは初めて人間と心を通わせることができた。
彼女はトモに自分の話をすることに決めた。
「私は、家族との約束を守るために、ずっとここにいたの。でも、もう彼らは戻ってこないんだね。」
トモはユキの話を聞き、彼女の願いをかなえる手伝いをすることを決意した。
彼は家の改装を進めながら、ユキのために家族の形跡を探し始めた。
そしてついに、彼はユキの家族の写真と手紙を見つけた。
ユキはその写真を見て、久しぶりに幸せな笑顔を見せた。
「これでやっと、安心して旅立てる…」
ユキはトモに感謝し、彼の目の前で少しずつ透明になっていった。
「トモ、ありがとう。君との出会いが、私の最後の願いだったんだ。」
ユキの声は風に乗り、彼女の姿はやがて完全に消えていった。
トモは寂しげに微笑みながら、彼女のために手を合わせた。
その夜、家は穏やかな光に包まれ、まるでユキが家族と再会したかのようだった。
ユキの幽霊は成仏し、彼女の魂はやっと安らぎを得た。
トモはユキの思い出を胸に、新しい生活を始める決意を固めた。
ユキの願いは、彼女の最後の瞬間までトモによって守られた。
そして、彼女の存在は、家の中にいつまでも温かな思い出として残った。